Distance‐マイナス5cm‐

あたしが恥ずかしそうに俯いて歩いている事を、きっとコイツは気付いてない。

誠の話に、小さな声で相槌だけ打ってる事も、さほど気にしてないんだろうな。


あたしは取り敢えず、周りの視線が気になって仕方ない。

もちろん繋がれた手の温かさや、あたしに歩幅を合わせてくれている優しさにくすぐったさも感じるけど、それより何より、誠がこんなカッコイイとは気付かなかった。

確かに学校でも人気者で、あたしも初めて会った時は可愛い感じの顔だなって思っていたけど……

よく見ると、その色素の薄い瞳は明るい髪の色とよく合うし、清潔感のある爽やかな笑顔は何とも煌めいていて眩しい。

そして誠を熱っぽく見つめる周りの視線、視線、視線。



いつもあたしは叶チャンの事しか頭に無くて、叶チャンの事しか見てなくて。

誠の魅力に気付いていなかった。


そーいえば前に結夢が言ってたな。

「霧島クンばっかり見てたら、他の男なんてもう見れないでしょ。アウトオブ眼中でしょ」って。

あの時は、叶チャン以外に目を向けるわけがないと思っていたから、結夢が何の事を言ってるのか分からなかったけど、こーゆう事だったのかと、実感した。
< 96 / 481 >

この作品をシェア

pagetop