Distance‐マイナス5cm‐

授業開始直前に、教科書忘れて慌ててるあたしに、
「俺いつも寝てるから適当に使って」って、教科書無理矢理貸してくれたり。


購買でお昼ご飯買い忘れたあたしに、
「買い過ぎちゃったからこれあげる」って、いつも学食のくせに、あたしの大好きなメロンパンをくれたり。



いつもいつも優しかったのに、何で気付かなかったのかな。



何だか今更気付いて、泣きそうになってきた。




「誠ぉ……」

「ん?」

「……ありがとね」



そう言って誠の手を握ったら、何だか凄く恥ずかしくなって。

でも、誠の呆気に取られた顔が、みるみる赤くなってくのが可笑しくて。




「早く行こッ」


あたしは手を繋いだまま、走り出してた。



――好きだから。


――好きになってくから。


――これからもっともっと。




叶チャンよりも、きっと……
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