ジェフティ 約束
 迂回を繰り返しながら、相当歩いている気がする。しかし、二人を囲む森の景色は出発したときとなんら変わっていないように感じられた。
 ラルフは時々、木の幹にナイフの刃を突き立て削っては方向を確かめた。年輪の幅の広いほうが南だ。頭上を覆う木の枝ぶりや、葉の向き、そして太陽の位置も確認する。
「いつになったら出られるんだ」
 シェシルが少々苛立って口を出してきた。
 ラルフは大きなナイフに体力を奪われてしゃがみこんでいる。肩で息を吐きながら、ちらりとシェシルを見やった。長剣と大きな荷物を背中に担いでいるのに、シェシルはまったく汗もかいていない。そんな姿にラルフは恨めしい気持ちになる。
「あんたが迷い込んだところは、この彷徨いの森のもっとも深いところだよ。そんな簡単には出られないさ。多分、今日はこの森の中で野宿だね」
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