ジェフティ 約束
 シェシルはラルフの手の中の小さな生き物の頭を、指でちょんちょんとつつく。
「腹減ったら食う気かよ。こんな小さいの、あんただったら一口だろう。この森には、こいつの家族がどこかにいるんだ。離れ離れはかわいそうだよ」
 ラルフは草むらに向かってフォックルを放した。きょとんとした真っ黒い目でフォックルはしばらく二人を見つめていたが、耳をぴくぴくっとさせるとさっと森の中へと駆け込んでいった。
「ナイフを貸して。早くここを出ないとね」
 ラルフはシェシルに笑顔を向けて、草むらに踏み込んでいった。

 昨日と同様の地形が続く。シェシルの大振りのナイフは、とにかく重い。ラルフは昨日から散々振り回したおかげで、腕の筋肉が悲鳴を上げていた。
 出発してから一時間もすると、腕の筋肉がぶるぶると痙攣を起こし始めた。シェシルに弱音を吐きたくないと、ラルフは前だけを見て黙々と草を薙ぐ。
 しかし、それももはや限界に近づいていた。狙いを定めても、手元が狂いナイフを何度も取り落とした。
 ナイフに振り回されているのは一目瞭然だ。
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