ジェフティ 約束
 ラルフは横目だけでその木のなれの果てを見た。恐ろしくて直視できない。
 ――ありえない……、ナイフで木を切り倒すなんて……。
「よし、こっちが西だな」
 硬直しているラルフを無視して、シェシルは年輪を調べ、さっさと歩き出した。
 ラルフは自然と自分の鼻先を指で触れる。薄っすらと血が滲んでいた。ナイフの刃はラルフの鼻先を皮一枚かすっていたのだ。
 ――ぜったい、わざとだ!
 ラルフは心の中で大声で喚いた。なんて危ないやつなんだ!
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