ジェフティ 約束
 その時、何やら遠くのほうから大声が届いた。そちらに目を向けるラルフの肩を、尚もシェシルは押して、森の中へ突き倒す。
「死にたいのか!」
 シェシルの表情に緊張感が張り付いていた。肩に食い込むシェシルの手が熱を帯びたように熱く、アメジストの瞳がちらちらと炎のような輝きを放っていた。
「……死にたくない……」
 と、ラルフの声が震える。「ならば森へ隠れていろ」と怒鳴ると、シェシルは身を翻して草原へと走り出た。

 森の茂みに身を潜め、息を殺してラルフはその一部始終を見ていた。
 あっという間だったと思う。しかし、ラルフはシェシルの動きに釘付けになり、その間息も止まっていたのではなかっただろうか。
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