ジェフティ 約束
第2章 記憶の傷跡

■2-1 命をかけるもの

 兵士から奪い取った馬にまたがり、シェシルとラルフは草原の只中を進んでいた。初夏の太陽は、真夏に比べればまだ奥ゆかしい感じではあるが、それでも肌をじりじりといためつける底意地の悪さを発揮している。目を刺す太陽の光をさえぎるため、二人ともフードを目深に被り、俯いて馬の首元を見つめていた。二人の足元には、影がくっきりと張り付いて常に付きまとってくる。
 周囲はどこまでも続く草原地帯。二人は身を隠すところが何もない場所を行くしかなかった。
 ――シェシルはどこへ向かっているんだろう。
 先ほどからラルフはずっとそのことを考えている。町は一向に見えてこないが、たまに荒れ果てた小さな小屋を見つけるたびにほっとする。人がいた形跡を見るだけで、自分が今進んでいる道は人の営みに通じているんだと思えるからだ。
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