ジェフティ 約束
 今日は、この強い酒が体に回るのが早い気がする。お前はこの酒に酔うように、王の手の内にいるがいいと、自分の体が言っているのか。
 運命とは一体何か。自分の人生はもう最後まで決まっているのだろうか。釈然としない想いばかりを抱え、ただ、毎日を繰り返している。本当にそれでいいのか。
 その運命とやらに、生まれたときから縛られている少女がいる。アスベリアは目の前の籠を見つめた。

 ソファーに体を投げ出し、長い足をはみ出してだらしなく横たわった。首を絞めていた軍服の襟のボタンを外し、中のシャツのボタンまで外すと、やっと息がつけたとばかりにため息を吐き出す。グラスの中に残っていた酒を一気にあおった。
 ――いいさ、ここには口うるさいお目付け役はいないのだから。
 軍人の品位とは!国民の手本に!領主とは格あるもの!もう、耳の奥にこべりついているほど何度も聴かされた侍従長の声がまたも聞こえてくる。しつこい幻聴だ。
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