ジェフティ 約束
 だが、シェシルの荷物を探っていて、思わぬものを見つけてしまった。
 袋の底のほうに、丁寧に麻袋に小分けされ、分類されて布に包まれていた金の塊、ノベリア金貨、コドリス銀貨、サルファイ・デナルの紙幣の束、それに大量の宝石がごっそり出てきたのだ。宝石も高級で大きな石ばかりで、それこそ一財産はあろうかという量だった。
 ラルフはちらっと中を見たが、一緒に来た少年にはそのことを隠し袋の底へと丁寧に戻しておいた。
「腹減ったなぁ」
 ラルフの後ろで少年がつぶやく。
「もうすぐ着くさ。それまで我慢しろよ、インサ」
 少年はインサと名乗った。インサというのは、ここら一帯で獲れるサンパスという川魚の心臓を使った下痢のくすりのことだ。それを知ってか知らずか、それが本当の名前なのかも怪しいところだと、ラルフは思っていた。
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