ジェフティ 約束
「おや、仲間を連れているのか」
 充血した目がラルフの顔を覗き込む。酒臭い息に顔をしかめて身を引いた。
「アロフから旅をしてきたんだ。ここに立ち寄る途中でインサを拾ってここまできたんだよ」
 ラルフはうそをつく。インサにもここに来る前同じことを言ったのだ。
「ほう、そうなのか」
 ご苦労さんだったな、まあ入れやと門番はあっさり通してくれた。――あれで門番が務まるのか?――とラルフは首を傾げたが、深く追求されずに済んで助かった。インサがいたおかげかもしれないと思う。

 門をくぐると、そこは昼間のような騒がしさだった。あたりは夜の色濃く、空には星が瞬いているのに、街は静まる気配がまったくない。
 どこからともなく旨そうな飯の匂いが漂ってくる。
 ラルフは今の自分の状況も忘れ、うきうきしてきてしまう。なにせ、街に来るのは始めて経験なのだ。
 テルテオ村の夜がこんなに騒がしい時は、豊作を感謝する祭りの日と、どこかの家で子供が誕生したときに村中で祝うときだけだった。
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