ジェフティ 約束
 テルテオ村では見られなかった背の高い石造りの建物。どの家の窓も開けられて、中は楽しそうな笑い声に満ちている。
「なあ、お前、街は初めてなのか?」
 インサは、口を開けっ放しにして目を丸くするラルフの顔を、面白そうに覗き込んだ。
「街って、どこもこんな感じなのか?」
「ああ、まあ、ここは特に騒がしい街だ。商人の集まる街だからな。ここから南西に行ったところにあるサンダバトナも大きい街だぜ。なんせ国王軍が駐留するところだし。そっちは大聖堂もあって、街の周りにたくさんの村も点在してんだ」
 ラルフは、この世界は自分の知らないことで満ちていることに始めて気が付いた。これから自分は、こんな知らないことばかりに遭遇しながらジェイを追わなくちゃならないのだ。
 そんなことをぼんやりと考えていたラルフの前に、インサが見たこともない真っ赤な実を差し出した。
「食えよ、ここまで馬に乗せてくれたお礼だ」
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