ジェフティ 約束
「くだらないことをごちゃごちゃ言ってないで、お前もさっさと汚れを落とせ。
 腹が減って仕方がない。まったく!言っておくがな、お前が昨日旨い飯を食ってのんきに眠っている間、私はずっと馬に乗って歩き続けてたんだぞ」
 申し訳ないとは思うが、町にたどり着くのに朝までかかってしまったのはラルフのせいではない。と思ったが口には出さないようここは自重する。
 雫の垂れるシェシルの短い髪が、重たいシルバーの光を放ち、浅黒い顔の輪郭を浮き上がらせていた。
 ――剣さえ握らず、口も開かず、ただ笑っていたら相当の美人なのにな。
 ラルフはシェシルに笑顔を見せると、入れ替わりに風呂場に入り戸を閉めた。
「おいラルフ。私の服とマント洗っておけよ」
「何でだよ!」
 ラルフは服を脱ぎながら目の前に散らばったままのシェシルの服を見つめた。
「当たり前だ。そんなに汚れたのはお前の責任だからな。ついでに言うと、荷物を盗まれそうになったのもお前の責任」
「もう、いいだろう…、悪かったと思ってるよ。でも珍しいな。今日はやけにおしゃべりじゃないか」
「うるさい黙れ!」
 風呂場の戸に、何かが投げつけられてぶつかる音がした。
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