ジェフティ 約束
 ラドナスとは比べものにならないほどの立派な石組みの堅牢な壁が街を取り囲み、その側面の大きな門は重々しい鉄でできている。その門は、毎日朝晩、壁の脇に取り付けられている巨大なハンドルを、街を警護するノベリア軍の兵士が二十人がかりで回し、開閉を行わなくてはならない。サンダバトナの黒門は、まるで国王住まう城門のごとき厳容と称され、見たものを圧倒するような威烈を放っていた。

 その大きくそびえる門に続く傾斜した坂を上り、アスベリアの軍はサンダバトナの街の中に入った。アスベリアが乗っている馬車の外では、門の警護につく兵士たちとアスベリアの軍の兵士たちがなにやら談笑しているのが聞こえてくる。馬車はアスベリアの指示通り、止まることなく軍の駐留施設の中へと入っていった。
 背後で、重々しく駐留施設の門が閉められた音がし、周囲の雑音がそれによって締め出され、辺りはとたんに静まり返る。
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