ジェフティ 約束
 ここは街の端とはいえ、時には国政を話し合う重要な場所であり、おいそれと街の住民が踏み入ることができる場所ではないのだ。そのため、軍施設は街からある程度の距離を保ち、壁で囲われた中に建てられていた。その区域の門が閉められたということは、中にいる人間は完全に街の喧騒から隔絶され、さらに城壁のごとき分厚い壁に守られ、奇襲にあう心配がまずないだろうという安堵感に包まれるのだ。
 アスベリアも、ここまでの十日間の道のりを、無事何事もなく乗り切ったことにほっとした。

 馬車が一層軋んだ音を立ててゴトリと止まり、外で馬の鼻息がブルルルと鳴く。まるで一仕事終えて褒美が欲しいと言っているかようだ。
 アスベリアがジェフティの手をとり、馬車から降ろすと、背後から男がゆっくりと近づいてきた。
「お疲れになられましたか?」
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