ジェフティ 約束
 簡素なしつらえの部屋だ。アスベリアは相変わらず自分の待遇の向上のなさにため息を吐く。これでも自分は血を吐くような努力で、今のこの地位まで昇ってきたつもりだ。少将といえば、馬上の騎士として国民の羨望の的として見られている存在のはず。それなのに、この扱いはどうだ。
 エドが部屋を選べるはずはない。国王軍の駐留には、王都の軍本体の指示が介入する。アスベリアにこの部屋を与えたのは、間違いなく上層部の指示なのだ。
 ――一体、いつまでこうしていればいいのだ。
 壁紙も張られていない薄汚れた灰色の壁が取り囲んだ、圧迫感を覚えるような空間。
 床はむき出しの石材で、壁と同じく灰色をしている。床だけ見ていればここが牢獄だと思っても間違いではないような、すべてを排除しきった愛想のない空虚な雰囲気が漂っている。
 壁際に寄せられたベットは、熟睡なんて最初からするなといわんばかりの粗末なもので、薄い布団が申し訳なさ程度に敷かれているのみだった。
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