ジェフティ 約束
 物音がした。アスベリアはふっと目を開ける。いつの間にか眠っていたようで、周囲は暗く帳が下りていた。部屋にはランプに火が灯され、彼の眠りを妨げないよう小さく絞った明かりで、その空間の形を浮かび上がらせていた。
 空に浮かぶ二つの月が赤い光りを放ち、周りを彩る星々が銀色の寒々とした針のような痛さを撒き散らしていた。窓から差し込むその光りが、アスベリアの横顔を微かに照らし物憂げに細めたキャメルブラウンの瞳に吸い込まれていく。

 再び音がする。耳をすますと、どうやら兵士たちが酒を酌み交わして談笑しているようだ。今日はこの敷地内から出ることは許してはいない。この敷地の外の町には、兵士たちにもなじみの女がいるだろうが、今は巫女姫の事もあり施設の門は硬く閉ざしている。二日後の出発のときまで、その門を開けるつもりはなかった。
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