ジェフティ 約束
 やはり、大したことのない男だ。それどころか、存在自体が無駄だと思える。王族とは中心から外れればあのようなものばかりなのか。
 そんなものにまで信服されていないことにアスベリアは愕然とし、そして虚脱感に体を包みこまれた。
「そんな顔するんじゃないよ。いい男が台無しじゃないか」
 この場には不釣合いな艶やかで濡れたような声が、アスベリアの前方から聞こえてきた。
 自分の部屋へと続く広場へ出る入り口のあたりだ。アスベリアは自然とそちらへ目線を送り双眸を細めた。
「……シェンタール……。お前も来ていたのか」
 アスベリアはため息を吐く。
 シェンタールは体のラインが強調されるようなぴったりとしたドレスをまとい、むき出しの細い肩に透き通ったショールをかけて、けだるげに自分の金色の髪の毛先をもてあそんでいた。
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