ジェフティ 約束
「何をいうのさ。仮にも領地を与えられた立派な騎士様だろう?私らからしたら、まさに大出世!おまけにいい男になっちまって。今のアスなら女が群がるのも当然。少しはうちに通って金を落としていったらどうなんだい。
 贅沢言うんじゃないよ。昔の垢まみれの生活を思ったら、雲泥の差じゃないか」
「確かに、そうなんだが……」
 そう褒めそやされても、アスベリアはいまいち釈然としない。
「惜しいことしたよ。あんたがこんなに立派になるってわかってたら、無理やりにだって寝ておくんだった」
 シェンタールの冗談が、アスベリアの心を軽くする。
「それももう間に合わないね。私、今、妊娠してるんだよ。
 ……そうだ、腹の子をアスの子供だと言ってやろうか。そうしたらあんたは私のものだよ」
「馬鹿を言うな……」
 ゆっくりと流れていたワルツは、いつしか夜想曲へと変わり、夜闇の中へと消えていった。静かで甘い旋律だけがその場に残り、思い出がそっと広がっていった。
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