ジェフティ 約束
 瞳を閉じて少しうなだれている小さな顔だ。まだ細く繊細で長いまつげが、途切れ途切れの光りに照らされ、頬に複雑な影を落としていた。少女が呼吸をするたびに影は震え、その姿を変える。
 まるで、木の下に寝そべって木漏れ日を顔に受けているようなそんな穏やかな表情だ。

 ――なぜ……。
 アスベリアは思う。
 ――確信のように、想い続けられるのか――と。
「ラルフか……」
 少女がつぶやくある少年の名前。アスベリアはテルテオからここまでの道中、何度も耳にした。必ず自分を迎えに来ると、その確信だけで、少女はこの平静を保っているのではないかとアスベリアは思う。
 何がそんなにも少女を奮い立たせ信じさせるのか。ただの恋心か……。アスベリアはふと、首筋がざわつくのを感じて、そこに手をやる。
 ――……美しいな……。
 少女は急にその双眸を開けると、アスベリアの方へと顔を向けた。アメジストに光り輝く瞳の中に、しっかりとアスベリアの姿を捉えていた。
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