ジェフティ 約束
 体に染み込んだ沢山の人間の血は、農夫に戻るだけでは洗い流せない。ノリスの苦しみに満ちた瞳が、アスベリアへの哀れみで歪み消えていく。
 ――ならば、オレはこの血塗られた道を行くまでだ。オレが信じる栄光を約束された地に続く道を。どんなに多くの人間を犠牲にしたって、それで権力を手にすることができるのならば。
 アスベリアの口元に薄っすらと笑みが浮かんだ。

 権力だ!何ものにも揺るがされることのない絶対的な力。
 万人が、自分に跪くその光景を、必ず見届けてやる!

 ――あんたには負けないぞ、ノリス!
 テルテオの村から立ち上る、天を焦がすような紅蓮の炎が脳裏によみがえった。
 ――どうだ。あんたが心臓を握りつぶされるような思いで守り続けた村は、いとも簡単に消滅したぞ。あんたが愛した土地を、その愛するものたちの血で汚してやった。もうオレを止めることはできない。
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