ジェフティ 約束
 アスベリアが思わず身を乗り出して、籠の網目に指が触れようかというその時だった。
「な!」
 馬車が唐突に大きくゆれ、前後に弾むように激しく軋むと動きを止めた。アスベリアの伸ばした手は空を切り、そのままよろめいて床にひざをついた。
「何があったんだ!?」
 アスベリアが素早く馬車の戸に手をかけたその瞬間、彼は至近距離から時の声が上がったのをはっきりと聞いた。
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