ジェフティ 約束
■災いの星
――一体、何が起きているんだ!?
ぬかるみに足を取られながら隊列の後方を見つめると、消えかかった松明の明かりを振り回しながら、血相を変えた兵士がアスベリアに駆け寄ってきた。兵士の後方にはぼんやりと雨に煙るその先にナーテ公の乗る白い馬車が見える。
「アッ!アスベリア様!」
悲痛なほどに裏返った声の兵士は、今や轟音と化した雨音にかき消されそうだ。
「何事だ!」
アスベリアはマントの中に手をいれ、剣の柄に右手の指を這わせた。
兵士の顔が松明の炎に照らされ、不気味に浮き上がっている。
――イムン……だったか……。
まだ幼い輪郭を残したその兵士の顔は恐怖に引きつり、頬が歪んで眼が大きく見開かれている。イムンは少年兵で、まだ戦場へと出たことはない。前日のテルテオ侵攻のときにもアスベリアはイムンをエドと同様サンダバトナに残したのだ。
ぬかるみに足を取られながら隊列の後方を見つめると、消えかかった松明の明かりを振り回しながら、血相を変えた兵士がアスベリアに駆け寄ってきた。兵士の後方にはぼんやりと雨に煙るその先にナーテ公の乗る白い馬車が見える。
「アッ!アスベリア様!」
悲痛なほどに裏返った声の兵士は、今や轟音と化した雨音にかき消されそうだ。
「何事だ!」
アスベリアはマントの中に手をいれ、剣の柄に右手の指を這わせた。
兵士の顔が松明の炎に照らされ、不気味に浮き上がっている。
――イムン……だったか……。
まだ幼い輪郭を残したその兵士の顔は恐怖に引きつり、頬が歪んで眼が大きく見開かれている。イムンは少年兵で、まだ戦場へと出たことはない。前日のテルテオ侵攻のときにもアスベリアはイムンをエドと同様サンダバトナに残したのだ。