ジェフティ 約束
「どこか身を隠せるところを探せ。明かりもつけてはいけないぞ。闇にまぎれろ。この声がやむまで決して出てくるんじゃないぞ」
 イムンはこくりとうなずくと、松明の炎をがけ下へと投げ出し隊の前方へと走り出した。
 アスベリアは、巫女姫の乗った黒塗りの馬車を見つめた。
「エド、頼みがある。オレの馬をすぐに用意してくれ。食料も袋に詰めるんだ」
「は!」
 アスベリアは、周囲に集まってきている隊列前方の兵士たちに命令を飛ばした。
「私もすぐそちらへ行く!戦に手馴れておらぬ元農民の集団とはいえ、気を抜くなよ!」
 後方では、ナーテ公の取り巻きの兵士たちとアスベリアの後方部隊がすでに山賊と交戦中だ。
 アスベリアはマントを翻し馬車へと駆け戻ると、自分のマントを肩から外し床に広げた。巫女姫は、馬車の明かり取りの窓から山肌のほうを食い入るように見つめている。アスベリアは懐から取り出した鍵で、扉を開けると巫女姫の手首を掴んでぐいっと引っ張った。
「何をするの!」
 夢中になって外を見つめていた巫女姫が、我に返ったかのようにはっとし、アスベリアの手を払おうと身を引いた。
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