ジェフティ 約束
「ご武運を…」
指先から温もりが体内に染み込んできたその瞬間、馬が走り出し指先が額から離れる。巫女姫の双眸が悲しげに伏せられ、あっという間に見えなくなる。
――どうか、ご無事で……。
巫女姫の祈りが、温もりと共に体の隅々にまで広がったのをアスベリアは感じていた。
「こんなオレのために、祈ることなんてないのに」
馬に跨ったエドの後姿が、闇の中へと吸い込まれるように消えていくのを見届けると、アスベリアはその闇に背を向け、腰に下げた自分の剣の柄をぎゅっと握り一気にすらりと抜刀した。今の自分には、この目の前にしか道はない。
雨が止んだ。雨季だというのになぜ。
足元に余韻を残し雨は姿を消し、頭上には二つの月が、アスベリアの今後を見届けようとしているかのように雲の隙間から久しぶりに顔を出そうとしている。
――なるほど、これはオレに対する運命の啓示か。
アスベリアの瞳にはキャメルブラウンに輝く強い光が差しはじめている。戦場と化した後方を見据え、その只中へと駆け出した。
指先から温もりが体内に染み込んできたその瞬間、馬が走り出し指先が額から離れる。巫女姫の双眸が悲しげに伏せられ、あっという間に見えなくなる。
――どうか、ご無事で……。
巫女姫の祈りが、温もりと共に体の隅々にまで広がったのをアスベリアは感じていた。
「こんなオレのために、祈ることなんてないのに」
馬に跨ったエドの後姿が、闇の中へと吸い込まれるように消えていくのを見届けると、アスベリアはその闇に背を向け、腰に下げた自分の剣の柄をぎゅっと握り一気にすらりと抜刀した。今の自分には、この目の前にしか道はない。
雨が止んだ。雨季だというのになぜ。
足元に余韻を残し雨は姿を消し、頭上には二つの月が、アスベリアの今後を見届けようとしているかのように雲の隙間から久しぶりに顔を出そうとしている。
――なるほど、これはオレに対する運命の啓示か。
アスベリアの瞳にはキャメルブラウンに輝く強い光が差しはじめている。戦場と化した後方を見据え、その只中へと駆け出した。