ジェフティ 約束
「……シェアナ……」
 戸口に立って泣き叫ぶ赤子を抱いたまま、呆然と立ち尽くすしかなかった。
 どのくらいの間そうしていただろう。気がつけばシェアナはエドに向かって両手を差し出し、エドの無事を喜び、にっこり微笑みかけてくれていた。心労でやせ衰えてしまった体を起こすこともできないというのに。それでもなお、エドに向かい彼のすべてを許そうと笑顔を向けている。
 エドは急に涙が溢れ出し、その場にくずおれてしまった。
「すまない!シェアナ……、私を許してくれ……!」

 それからまもなくシェアナはこの世を旅立った。エドが貰ってきた赤子を愛しそうにその胸に抱きながら。
 シェアナは最後までエドに微笑みかけてくれた。食べ物が喉を通らなくなるほどに寂しい思いをさせてしまったのに。
 ――いっその事、私に罵声を浴びせ憎んでくれればよかったのに。
 シェアナはその代わり、何ものにも替えられない愛情をエドに残していった。
 あの時ほど、女を心の底から愛しいと思ったことはない。
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