ジェフティ 約束
「迷わずにこのまま行って!」
「しかし……」
「お願い!傷ついても苦しんでも、それでもいいの!ラルフに会いたいの!」
 巫女姫の瞳から涙が一筋零れ落ちた。
「私も同じだけ苦しむから!同じだけ傷つくから。だからお願い」

 ――罰は私が受ける。災いの星を拾うのは、ラルフに少しでも災いがふりそそがないように。私はもう、巫女姫なんかじゃないもの。ラルフの幸せだけを願う一人の女の子になりたい。
 もう、エドには何も言うことはできなかった。巫女姫の決意は大岩のように揺るぎなく、氷で閉ざされた海の下の水のように、心は孤独で凍り付いていた。
 ただ一心に、大切な人に会いたい、その想いを抱えて。
 エドは馬の足をオルバーへ続く道へと向けながら、神に願わずにはいられなかった。
 ――どうか、この子をこれ以上苦しめないで下さい。来てくれると信じてやまない少年を傷つけるようなことだけは。どうか、どうか……。
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