ジェフティ 約束
「……夜になったら教えろって……、雨戸が閉まってちゃ夜になったかどうかなんてわからないじゃないか」
 ラルフはため息をつき、――いてて――とうめきながらようやく立ち上がった。
 シェシルの命令は絶対だ。悔しいけれど、それが今の状況を把握した最善の答えだからだ。始めて来た大きな街ではしゃぎ、油断をしたためにシェシルの荷物を盗まれそうになった。というか、実際盗まれたのは、完全にラルフのせいなのだ。
 さっきだって、街を見物したいだなんて言ったりした。無神経だった。
 ただ純粋にラルフは街の中の様子を知りたかっただけなのだが、考えてみればラルフたちは普通の旅人ではない。ここに来る途中の出来事を思い返した。
 ――今でも、命を狙われているのかな。
 なぜ……、そこまでして村人を追い掛け回す必要があるのだろう。ただ、ジェフティと共に数ヶ月生活したというだけなのに。それだけなのになぜ殺されなくちゃならなかったんだろう。ラルフは、自分の理解のできない出来事について答えを出すことができず、思わず顔をしかめた。シェシルならそのことについての答えを知っているのかもしれない。
 シェシルの慎重な態度を見れば、今もまだ危険が去ったわけではないと気がつく。軽率な行動はシェシルの足を引っ張るだけだ。子供だからって甘えてはいられない。
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