ジェフティ 約束
 それにもう二度も、シェシルに命を助けてもらった。
 ――俺の為に、シェシルは人を殺した。
 思い出すだけで、ノベリアの兵士たちの殺気がラルフの体を縛り上げた。あんな殺意を向けられたことなんて一度もなかった。
 ――俺たちが何をしたって言うんだ!
 不条理さに手が震える。
 ――シェシルは、平気なのかな?
 ラルフの代わりに、またその手を血で染めた。風呂場で自分の手を――血で染まっている――と言って眺めていたシェシルの悲しげなまなざしを思い出す。
 ――なぜ、俺の為に……。
 シェシルの穏やかな寝顔を見つめた。今まで一人で旅をしていたんだろうに。今更、仲間が欲しいなんてことはないはずだ。こんなガキを拾って連れ歩くなんて、自ら問題を背負い込んだようなものだ。
 ――……ノリス。
 忘れられないノリスへの想いが、シェシルにそうさせているのかもしれない。ラルフはノリスに感謝した。きっとノリスがシェシルに出会わせてくれたに違いない。そう自然と思えたからだ。
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