ジェフティ 約束
 ラルフは首を横に振りながら走る馬に叫んだ。
「そっちじゃない!」
 暴れながら人通りの多い道を走ってくる馬を見つけた人々が、慌てふためいて道をあける。
「きゃあぁ!」
「なにするんだ!」
 突然起こった騒ぎに街中が大騒ぎだ。ラルフは馬の背に身を伏せて、その人ごみの中を駆け抜けた。
 ――このまま、広場を抜けて街の反対側へ出るか。
 女が逃げ惑い、露店で店を出していた男のテントを引き倒しながら、マスターブリッシュの店アフィシオンの前まで来たとき、ラルフは身を起こして馬の切れた綱を力任せに引っ張った。
 ――だめだ!まだあそこにはシェシルがいる!
 ラルフが道の真ん中で馬をぐるりと方向転換させるのを、街の人たちは呆然と見つめていた。
 道のいたるところに、飛び散った果物やら、テントの残骸が見える。ラルフは口をぎゅっと引き結ぶと、元きた道を再び走り出した。
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