ジェフティ 約束
 ラルフはそういえばと口を開く。
「……ごめん、シェシル。あのナイフ……、気に入ってたんだろう?ほら、俺を助けるのに、あいつらに投げつけた……」
 宿屋のカウンターでラルフを殺そうとした兵士の首に刺さった大振りのナイフを思い出したのだ。シェシルは兵士たちと組み合いながらも、そのナイフを投げて、ラルフを助けたのだ。
 一瞬、シェシルが考え込んだのだろう。間がある。
「……ん?ああ、それなら、宿屋を飛び出す前にもう回収している。ついでに、お前が使いっぱなしにしていた短剣もな」
 そういうと、ごそごそと腰の辺りを探ってから、ラルフにほらっと手渡した。
 ラルフの目の前で、暗闇の中でも薄っすらと光る短剣の刃が揺れる。シェシルとラルフの長剣も、この暗闇でも光る金属ガウリアンでできている。
「これはお前が使え。鞘はまだ持ってるんだろう?腰に下げておくといい。これなら今のお前にもちょうどいい長さだから、いざという時に役に立つ」
 ラルフは慌てた。
「え!でも、これガウリアンだよ。すごく高価なものなのに……」
「ばか。高いかどうかじゃないんだよ。武器の価値なんてものは、切れるか切れないか、役に立つかどうかということなんだ。身を守る為のものに安い高いは関係ない。いいからさっさとしまえ。その光りは、これだけの闇の中では目立つ」
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