ジェフティ 約束
 シェシルは冷ややかな何の感情も含んでいない声で、インサに問うた。
「金の出所はどこだ」
 インサはびくりと体を震わせて、おずおずと懐から軽くなった皮の袋を取り出す。
「どうせ、私たちの情報を売ってノベリア兵から金をせしめたんだろうが」
「すまなかったって思ってんだ。ラドナスの門番に、おれとラルフが一緒に居たってノベリア兵に密告されて……。ラルフの居場所を言わないと殺すって……。この、残った金は姐さんに渡すから」
 インサが差し出した皮袋をシェシルは片手で払いのけた。
「それ以上何か言ってみろ。その首、へし折るぞ」
 インサは地面にぽとりと落ちた皮袋を拾い上げ、ぎゅっと握り締める。インサが涙を浮かべてその場に突っ伏し、シェシルに何度も頭を下げるのを見つめながら、ラルフは何とか連れて行ってあげられないのかとシェシルに声をかけた。
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