ジェフティ 約束
「剣という武器は、相手だけではなく自分の身をも対等に傷つける。だから、己の弱さを知ることが一番大事なんだ」
 シェシルは焚き火にさっきまで握っていた木の枝を投げ込み、ルシュタンというコドリスの甘味のある茶を作るために、湯を沸かす準備を始めていた。そんなシェシルを見つめながら、ラルフはずっと気になっていたことを口にした。
「……シェシルは誰に剣術を教わったの?」
 どうしてシェシルはそんなに強いのか、いつから剣を握っていたのか知りたかったのだ。
「誰ってこともないが、基本はノリスだろう。最もそのときはたしなみの一つ程度のものだった。体術は私を拾ってくれたデナル人の傭兵の男が、メルタナンの使い手だったから」
 先日の宿屋での乱闘の際、シェシルが短剣を脇にひきつけるように構え、体を武器に兵士と組み合っていた光景を思い出した。ラルフはその体術の名を知っていたが、実際どんなものなのかは見たこともなく、まさかシェシルの動きがそれだとは思いもしなかった。
< 342 / 529 >

この作品をシェア

pagetop