ジェフティ 約束

■4-3 不穏な進行

 霧深い国境をラルフたち一行は進んでいた。やがてベチカ山脈が途切れ、コドリスとノベリアとの国境関門が現れると、三人は一同に安堵の表情を浮かべた。ここ二日間は、ラルフの読みどおり、雨季が到来したことを告げる細い雨が昼夜を問わず降り続き、足元をあっという間にぬかるみに変えていた。
 空を見上げても、分厚く垂れ込めた鈍い鉛色の雲が太陽や月を隠してしまい、方向を見失いそうになっていたのだ。

「関門にノベリアの兵士はいないようだ。でも、コドリス兵が物見櫓から、ノベリア側も監視しているのが見えた。夜のうちに、闇にまぎれてコドルに入るしかないな」
 関門に近づいて様子を見に行っていたシェシルは、戻ってくると馬の背に乗せていた荷物を降ろし始めた。
「コドル山脈は、プリスキラの中でも最も切り立った山脈だから、馬は連れてはいけない。正規ルートの山道を行けない私たちは、山肌をよじ登っていかなくちゃいけないから、なおさら無理だろう。オルバ山を越えれば、町があるから、そこでまた馬を調達することにしようか」
 ここまで従順にしたがって一緒に山道を歩いてきた馬たちと別れるのは、少し寂しい気がしたが、これからの道筋を想像すると連れて行くのは到底不可能だ。
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