ジェフティ 約束
「おれの乗ってた馬の代金で、食料と雨よけのマントを買ってきたんだよ。コドルの山ん中に入ったら、今までみたいに焚き火を焚いたりする場所なんてないかもしれないだろう?雨風がしのげる場所が見つかるかもわからないからさ」
 荷物の袋をといて、インサは三人分の雨よけのマントを取り出した。このマントは、分厚いツロ綿のごわごわとした布に、鉱石油をたっぷり染み込ませた、どっしりと重たいものだった。
「……インサ、なんでそんなにコドルのことに詳しいんだよ」
 インサから受け取ったマントを背中に背負い、フードを目深に被ったラルフは、インサがこれから行くコドル山脈の状況にやけに詳しいことに気が付いた。
「ああ、おれはオルバ山の麓の町の産なんだよ。知ってるか?旨いりんご酒を生産してるベリドルって町」
「町の名前は聞いたことがあるけど……」
「ベリドルはここからだと、第二都市のオルバーを越えて、オルバ山を下った先にあるんだ。すぐ北はまだコドル山脈がそびえてる。ドルテナ山とアンバティナ山の山頂も見渡せる場所さ。おれは、ガキの頃そこで育ったから、コドルのことはよく知ってる。山岳地帯が広がっていて、山道も険しいんだ」
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