ジェフティ 約束
 女性から離れ暖炉の側に戻ってきたノリスも、冷たい雨に体温を奪われたのだろう、少し青白い顔をしていた。
 ダルクとノリスは、ラルフが二人の野菜スープを暖めている間、暖炉の前で濡れた頭の雫を拭きながら、ぼそぼそと小声で話をしていた。
「ディルーベスの巫女か。なぜこんな遠く離れた地に。それにあの村はもう…」
 ダルクがちらりと女性のほうを見る。
「ああ、一年前に戦渦に巻き込まれて壊滅したと聞いた。生き残りがいたとはな、むごい話だよ」
 ノリスはラルフから木の椀に注がれた野菜スープを受け取ると、ゆっくりとほくほくで汁の浸み込んだ芋を口にした。
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