ジェフティ 約束
 ノリスの話によると、以前からコドリスでは、ノベリアの繁栄はディルーベスの力によるものだと考えるものが多いという。折りしもコドリスの農村に広がったディルーベス信仰も手伝い、我が国にも巫女姫をとの、気運が高まっていた。
 ディルーベスの村はテルテオと同じく、コドリスとの国境に使い場所にあり、両国の小競り合いの中、戦火に巻き込まれてしまったのだ。
「巫女はノベリアの為に存在しているわけじゃない。この世界の万人の為に平和を祈り続ける存在のはずだ。それを政治の道具になど」
 ノリスが苦々しいものを口に含んだような表情で吐き捨てるように言うと、手にしていた木の椀をテーブルの上に叩きつけるように置いた。
「一年もの間、逃げ回っていたのか……、可哀想に……」
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