ジェフティ 約束
 ラルフは一瞬で事態を飲み込み唇を噛み締めた。
「山賊のガキか。こんな夜更けになぜうろついている」
「山賊なんかじゃねえよ!」
 ラルフの頭を押さえつけるシェシルの手に力がこもった。山賊だと誤解されていたほうが、この山の中をうろついている言い訳もつくのに。
 ――インサのやつ!
「小僧、仲間はどうした。お前だけじゃないだろう」
 インサが黙り込んで、辺りは急に雨音が闇夜を支配する。じわじわと重苦しい湿った空気がラルフの首を締め上げていくようだ。
「……あんの馬鹿が!ラルフ、荷物を持って奴らに気がつかれないように道に出るぞ。何食わぬ顔で旅人のふりをするんだ。こんなところで隠れているほうが余計怪しまれる」
 二人は野営地の明かりが届かないところまで慎重に戻ると、木陰で小さなオイルランプに火を灯し、道を照らし出して歩き始めた。
「いいか、話しは私がする。お前はしゃべるな」
 ラルフが頷くのを確認すると、シェシルはわざと手に提げたランプを振りながら野営地に近づいていく。
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