ジェフティ 約束
 親子二人で、なれない旅を続け逃げ回っていたということはラルフでもわかる。少女の大きさの合わない旅用の靴を、無理やり履いていたところを見ただけでも安易に想像がついた。
 今は、この村でゆっくりと休んでほしい。できれば、目覚めた少女と話しをしてみたい。そう思うだけで、ラルフは自分の頬が火照るのを感じた。


 次の日、ラルフは女の子の目が覚めたという知らせに、取るものもとりあえず治療院へと走った。そのあわてぶりは、まるでどこかの家が火事にでもなったのかと、村人が驚くほどだった。
「女の子の目が覚めたって、ほんとっ!……や、やあ……お、おはよう」
 勢いよくドアを開けると、シモーヌがあきれた顔で「こらラルフ、静かにおし!」とラルフをたしなめたが、当の本人はそんな言葉も一瞬で耳に入らなくなっていた。
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