ジェフティ 約束
「……今は、夜なのか」
我ながら間の抜けた発言だ。しかし、アスベリアの傍らにいた男は、ただ「ああ、そうだ」と言いながら元の位置へと体を戻す。アスベリアはしばらく体を横たえたまま、周囲をぼんやりと見渡した。
――馬車の中か……。
傍らの男に目をやる。先ほど、自分に殺気を突きつけ脇腹を殴りつけた大男が、黙って酒の注がれたグラスに口をつけているところだった。不思議なほど穏やかに佇んでいる。アスベリアはゆっくりと身を起こした。男の雰囲気に引きずられたのだろうか。アスベリアもなぜかとても穏やかな気持ちになっていた。いや、自分が置かれているこの状況が一体どういうことなのかはわかっていた。捕らえられ縛られて、どこかへ連れて行かれる途中なのだ。
――オレは、国から開放された。
そんな気がしたのだ。襲撃に遭(あ)うまで、あれほどこの身を大地に縛りつけ、国という後ろ盾の窮屈さをいやというほど知らしめていた重圧は、今はもう感じられない。体から力が抜ける。
――捕虜か。そんな立場に身を落としているにもかかわらず、我ながら暢気なもんだな。
と、アスベリアは心の中で苦笑した。
我ながら間の抜けた発言だ。しかし、アスベリアの傍らにいた男は、ただ「ああ、そうだ」と言いながら元の位置へと体を戻す。アスベリアはしばらく体を横たえたまま、周囲をぼんやりと見渡した。
――馬車の中か……。
傍らの男に目をやる。先ほど、自分に殺気を突きつけ脇腹を殴りつけた大男が、黙って酒の注がれたグラスに口をつけているところだった。不思議なほど穏やかに佇んでいる。アスベリアはゆっくりと身を起こした。男の雰囲気に引きずられたのだろうか。アスベリアもなぜかとても穏やかな気持ちになっていた。いや、自分が置かれているこの状況が一体どういうことなのかはわかっていた。捕らえられ縛られて、どこかへ連れて行かれる途中なのだ。
――オレは、国から開放された。
そんな気がしたのだ。襲撃に遭(あ)うまで、あれほどこの身を大地に縛りつけ、国という後ろ盾の窮屈さをいやというほど知らしめていた重圧は、今はもう感じられない。体から力が抜ける。
――捕虜か。そんな立場に身を落としているにもかかわらず、我ながら暢気なもんだな。
と、アスベリアは心の中で苦笑した。