ジェフティ 約束

■約束

 春が訪れ、テルテオの村は畑仕事に精を出す村人たちの姿をよく見るようになった。
 次の長い冬を越す為の準備が、もう始まっているのだ。
 ラルフも、父親の畑に種を蒔き、水路から水を引き入れ、土に水を張る。その傍らで、外に出られるようになったジェイが、柔らかな黄緑色の草に腰を下ろし、楽しそうに作業を眺めていた。
「終わったよ、ジェイ。今日は魚釣りに行こう」
 時には、村の子供たちと一緒に、遊びに出かける。ジェイは生まれて初めて、同じ年頃の子供たちと遊んだようだ。子供たちもジェイの容姿に最初は戸惑っていたが、彼女が話す神様のお話、百年も生きた長老の話し、海の向こうの遠く離れた国のこと、星占い、そんなすべてに夢中になった。
 ラルフはジェイの笑顔を見るだけで幸せな気分になり、この笑顔を守ると誓った丘の上の約束を思い出す。ラルフのラピスラズリのピアスは、その時ジェイにもらったものだ。意志の強さをあらわす石。ジェイとおそろいのピアス。
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