ジェフティ 約束
 ――それならば……、いっそ、オレの手で……。
 利己的なのはわかっている。それでも自分以外の誰かに、ルーヤの命を奪われるのは耐えられなかった。
 アスベリアは杯を取るとそれを一気に口の中へ流し込んだ。喉が焼け付くように熱くなる。胸がつまり涙が瞳に溢れ出した。それを押し戻そうとするかのように、アスベリアは杯を地面に叩きつける。
 サズルは眼を細め、満足そうに頷き手を叩いた。
「わしは歓迎するぞ、アスベリア=ベルン!」
「……まだだ。……まだ、やることがある」
 アスベリアは天幕の外を再び見つめた。この地方特有の雨期に降る激しい雨が、突然乾いた大地を水煙を上げる勢いで叩き始めた。
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