ジェフティ 約束
「これが、影武者の使命だからだ」
 そんなことを聞きたかったわけではないだろう。アスベリアは自分自身への言い訳を探していた。シラーグに許されても、アスベリアの気持ちはじくじくとした汚泥のような闇が渦巻いていた。
「これが、アスのしたかったこと?」
 殴られて青黒く腫れた顔が、アスベリアを見上げる。ルーヤは泣いてはいなかった。ただ、シラーグと同じ、己の運命を知ったものの明決な意思が宿る瞳が、アスベリアと同じ琥珀色をした大きな瞳がじっとアスベリアを見据えていた。
「この村を出て、それで手にしたかったものなの?自分まで裏切るの?自由になれないの?」
 ルーヤは微笑んだ。もうわかっているのだ。アスベリアがなぜここに来たのかを。
「ごめん……、こんなこと、アスだって辛いはずだよね」
 ――いっそうのこと、罵ってくれればいいのに。
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