ジェフティ 約束
■5-3 明けぬ夜に消えゆく
アスベリアは用意された部屋で、擦り切れた毛織物に丸まりうずくまった。くしくも、そこは昔自分の部屋だった場所。弟妹と寝起きを共にしていたかつての自分の生活の場。そこにはまだ、見覚えのある傷だらけの机や、アスベリアが不注意で床に落とし、角を凹ませてしまった妹ナタシヤの宝石箱などがそのまま残されていた。ある日、唐突に時を止めたその部屋は、アスベリアをどう思いその扉を開いたのだろう。
驚いたことに、傷だらけの机の上には作りかけの花嫁の髪飾りがあった。小刀でサワロンの木を削り、神の祝福を願う時に使われるバラの花が丹念に彫られていた。その脇に置かれた小刀を手に取る。
「オレの小刀……、エル……」
姉思いの末の弟エルレイ。きっと、愛する姉の為にこれを作っていたんだろう。
――そうか、ナタシアもそんな歳になってたんだな。
十年という月日は、アスベリアには計り知れないほど早く過ぎ去ったのだ。
驚いたことに、傷だらけの机の上には作りかけの花嫁の髪飾りがあった。小刀でサワロンの木を削り、神の祝福を願う時に使われるバラの花が丹念に彫られていた。その脇に置かれた小刀を手に取る。
「オレの小刀……、エル……」
姉思いの末の弟エルレイ。きっと、愛する姉の為にこれを作っていたんだろう。
――そうか、ナタシアもそんな歳になってたんだな。
十年という月日は、アスベリアには計り知れないほど早く過ぎ去ったのだ。