ジェフティ 約束
『これが、アスのしたかったこと?この村を出て、それで手にしたかったものなの?自分まで裏切るの?自由になれないの?』
 ――自由なんて何処にもない。手にしたものなど何もない。
 裏切って手にはいるものに何の意味もない。
 ――オレは弱いから、みんなを、本当に大切な人たちを傷つけることしかできない。

 それでも、今しかない!

 アスベリアは音もなく立ち上がると、扉をそっと開けて辺りをうかがう。雨はまだ降り止まず、低いところにある頭上の屋根を容赦なく叩いている。雷鳴が轟き、時折辺りを眩しく照らし出した。酔いつぶれた兵士たちが、床に雑魚寝をしているのが見えた。男たちのいびきと雨音以外何も聞こえない。
 足音を立てないように静かに部屋の外へと出た。サズルが寝泊りしているなら、この家で一番広い部屋、アスベリアの両親の寝室を使っているだろう。
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