ジェフティ 約束
「ふん。よくやった……と褒めてやりたいところだが、ぬしが考えておったことなど、先刻承知。予測はできておったわ!」
「クソ!」
 サズルはアスベリアの腹に突き立てた剣を抜くと、寝台の上に起き上がった。
「仲間を裏切り、国を捨ててまでわしの懐に入り込んだのは上出来であったが。しかし残念だったな」
「最初から捨てた命だ。当然、戦って生き延びてやるさ。あんたと同じでオレも、戦場でしか生きられないんでね」
 一瞬サズルの口元に愉悦の笑みが浮かぶ。
「ならばここで死ね!」
 サズルの剣は夜の闇の中で青白く燐光を放っていた。アスベリアは最初の一撃を身を引いて庇うと、床を転げるようにしながら青白い燐光から逃げた。
「そんな心もとない得物でわしの剣にかなうと思うか!」
 アスベリアの手に握られた小刀が、雷光できらりと光る。
「ベルン。お前は所詮そこまでだ。弱い人間とは、自分の運命を操る術を知らん者のことをいう!己の技量を恥じるがいいわ!」
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