ジェフティ 約束
 ぐっしょりと雨に濡れた上着が身体にまとわりつき、体温が急激に奪われてゆく。オイルローブを肩にかけていても容赦なく染み込んでくるほどの激しい雨が、アスベリアの身体に降り注いだ。どんなに身体をきつく抱きしめても、歯ががちがちと音を立てた。
 サズルに刺された脇腹が疼いて、眼がくらむ。
 ――これ以上血を失ったらまずい……。
 ぼんやりとそんなことを思いながらも、アスベリアにはどうすることもできなかった。

 ずいぶんと歩いてきたような気がするが、確信はない。激しく降り続く雨がアスベリアの身を隠し、追っ手はきっとアスベリアを見失ったはずだ。しかし、果たして自分がカリシアに向かっているのかわからなかった。
 地面さえも見えない闇。地に足が着いている感触も徐々に失われ、境界線は曖昧になってくる。懐に抱えた剣だけが青白く存在を誇示していた。
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