ジェフティ 約束
「お前の命は無駄じゃない。誰にとっても、価値があるからだ」
「オレの命だと?陛下にとっても、この国にとっても、オレの価値は替え玉が利くもんだろう!そうじゃないのか。……だけど、お前は違う!ここに残れよ!お前はもう、オレだって……、戦場でしか生きられないんだから」
「お前だから、私は行ったんじゃない、アスベリア。誰も……、誰もが替えが利く存在じゃないのは、お前だってわかってるだろう?私の命は、私を必要としてくれる故郷の人たちのものだ。確かに私たちは、陛下にとって捨て駒の一つだ。だからといって、何のために人を傷つけなくてはならない。もう剣を握る理由がみつからないんだ」
 アスベリアにノリスは疲れきった表情でそう言い頭(かぶり)をふった。
「欺瞞(ぎまん)だ!だからなんだっていうんだよ!あんたが剣を手放しても現実は何も変わりはしない。あんたはただ、自分の罪を許されたいと思っているだけじゃないか!」
 アスベリアは自分が抱える虚しさを吐露した。
 ――そうだ、オレは罪を犯した。誰にも許されない罪を!
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