ジェフティ 約束
外が白々と明るくなってきた。一晩中降り続いた雨が、朝の訪れと共に姿を消し、あたりは静まり返っている。
太陽の光で温められた空気が、大地に染み込んだ雨水を蒸発させ、徐々に空へと登っていくのをじっと見つめていた。空へと帰ってゆく雨水は、魂の浄化の軌跡だろうか。アスベリアはふと、漂い風に吹かれ舞い上がる靄の姿に思いを馳せた。
――ルーヤも、あの時降った雨水と一緒に天に召されたのだろうか……。それとも、まだこの地に留まり、オレを見ているのだろうか。
「国境を越える前に、この馬車は捨てていくぞ」
いつの間にか目を覚ましていた男が、アスベリアの横顔をじっと見つめながらそういった。
国境を越える。それはコドリスとノベリアの国を分かつ、長く横たわるように連なるコドル山脈を抜けていくということだ。そして、己の運命もまた、引き返せない道を進むことになるということでもある。
山脈の合間をぬうように進み、標高の低いところを選んで進んでいるのだが、さすがに朝は冷える。
「寒いな」
アスベリアはそういうと、身を丸めてグラスに残っていた酒をあおった。
太陽の光で温められた空気が、大地に染み込んだ雨水を蒸発させ、徐々に空へと登っていくのをじっと見つめていた。空へと帰ってゆく雨水は、魂の浄化の軌跡だろうか。アスベリアはふと、漂い風に吹かれ舞い上がる靄の姿に思いを馳せた。
――ルーヤも、あの時降った雨水と一緒に天に召されたのだろうか……。それとも、まだこの地に留まり、オレを見ているのだろうか。
「国境を越える前に、この馬車は捨てていくぞ」
いつの間にか目を覚ましていた男が、アスベリアの横顔をじっと見つめながらそういった。
国境を越える。それはコドリスとノベリアの国を分かつ、長く横たわるように連なるコドル山脈を抜けていくということだ。そして、己の運命もまた、引き返せない道を進むことになるということでもある。
山脈の合間をぬうように進み、標高の低いところを選んで進んでいるのだが、さすがに朝は冷える。
「寒いな」
アスベリアはそういうと、身を丸めてグラスに残っていた酒をあおった。