ジェフティ 約束
「戦いに愛されたというのは容易いが、そう周知させるほどの努力をあの方は人知れず積んでおられたのだ。剣技など、お前の比ではないぞ」
「ああ、そうかよ」
 アスベリアは思わずぼやく。そもそも、アスベリアは剣術が苦手なほうだ。
 セオールは、王の寵愛を一身に受け、生まれながらにして正当な王位継承権を持つ兄たちの反感を買うことになった。バルナバ=ジェスタルはこう言ったという。
 ――余の後がまを得たければ、兄弟であれ蹴落してみせよ、と。
 それが引き金になったかどうかはわからないが、ベガンダスで開かれた王族の集まる晩餐会でセオールは命を狙われ襲われた。
「人の価値は、身分の優劣で決まるものではない。能力の優劣よりも血統か?」
 スヴィテルは真剣なまなざしでアスベリアをじっと見つめた。
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