ジェフティ 約束
 ラルフの顔に、生暖かな鮮血が飛び散る。それはまるで、色のついた柔らかい雪のように。
 ラルフは、自分にのしかかるリリールの横顔を呆然と見つめていた。リリールの口からあふれ出した血が滴り落ちる。
「さあ、早く逃げるのよ……」
 真っ白な胸を真っ赤な血で汚しながら、リリールはなおも二人に逃げろとつぶやいた。必死に身を起こすと、今度は兵士の足にしがみつく。そして消え入りそうな声で何度も何度も……。
 その姿にぎょっとした兵士が、第二撃をリリールに打ち込もうと剣を構えた。

 ――父さんは、俺に生きろと言った。ノリスの剣は村人を守る剣だ。婆様も、命を賭して俺を生かそうと逃がしてくれた。俺は……。
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